みえる / みえない

 

樹は太陽に向かって伸びる

伸びる分だけ、地中に根を張る

 

 

本当は、地上に伸びる幹と同じくらい

深く潜れればいいのだろうけれど、

 

地球はそれほど柔らかくない

だから、水平に根を伸ばす

その無数の根で地球を掴む

 

 

氷山は海に浮かぶ氷

水面から顔を出しているのはほんのわずか

残りの9割は水面下にある

重力はそれほど優しくない

 

だから、自分のほとんどを沈める

その浮力で地球の重力から自分を引き剥がす

 

 

 

 

講演会の資料をつくるのに

自分の仕事を振り返る

 

空間を考えて、20年余

手がけた建物もそれなりに増えた

 

同時に、

その何倍もの建物のアイデアが、

日の目を見ることなく終わった。

 

 

見えている部分が

樹のように高く高く伸びようとも

氷山のようにほんの一角であろうとも

たとえ形になっていようとも

 

 

見えていない部分が

大地を掴んでいるから

重力に抗っているから

そして

形にならなかったものたちがいるから

見える

 

 

 

「見える」は「見えない」に支えられている

 

 

だからこそ

見えないこともまた、愛おしいとおもう

 

 

そんな資料と面映い感覚とともに、

ソウルで講演してきました